森ちゃんの絵本のお家:子どもは楽しみ、大人は涙する。音楽と絵本、おいしいお茶と楽しいおしゃべりで心が軽くなる絵本のお家
子どもたちに絵本を読んであげたいけど、どんな絵本を読んであげたらいいのかな?
絵本を読んであげたいけど、時間がとれないな。
子どもが絵本を読ませてくれない…
そんな悩みを解決し、絵本の楽しみ方を発見したり、読みたい絵本を見つけたりできる場所「森ちゃんの絵本のお家」を見つけました。
横浜市泉区。相鉄いずみ野線いずみ中央駅から長後街道を5分ほど歩いていくと、ケーキ屋さんの隣に小さな看板を発見。
森ちゃんの絵本のお家はかわいいラベンダー色の階段を上った2階にあります。
階段を上ろうとすると、左手に大きな黒板が見えました。ここに森ちゃんの絵本のおうちがオープンされる日が書かれています。
ちょっぴり急な階段ですが、一段一段上った先にあるドアをノックすると、「は~い」とオーナーの森ちゃんこと森川美代子さんが出迎えてくださいました。
おうちに足を一歩踏み入れると、壁一面に飾られた絵本が目に飛び込んできました。
訪れた日はクリスマスを数日後に控えた日。
クリスマス関連の本だけでもこんなにあるんだ?!と驚いてしまうくらい、本当に小さい子向けのものから大人向けのものまでと、様々な種類の絵本が飾られており、思わずあれこれと手に取ってしまいます。
実は、このお家には英語で書かれた絵本も置かれています。英語の本でもかわいい表紙につられて、絵本を開いてみたくなるのは、たくさんの絵本に囲まれているおかげなのかもしれません。
絵本の世界がより深く。音楽との共演「コンサートリーディング」
ここ、森ちゃんの絵本のお家で、「音楽と共に送る絵本の読み伝え~コンサートリーディング~」を月に3~4回開催されています。
コンサートリーディングは、森川さんの英語の先生が考案した英語の絵本をよりわかりやすく伝えるための技法です。その技法を森川さんが継承し、英語だけではなく日本語の絵本も読み伝えています。
今回は、親子連れの参加者が3組でした。出されたお茶を飲みながら落ち着いた頃に、コンサートリーディングが始まりました。1冊目の絵本を手にしたところで、泣いているお子さんが。。。
お子さんが喜びそうな絵本を持ってきて「じゃぁ、この本を開いてみて~!!」と、声をかける森川さん。ページを1枚めくるごとに立体のものが飛び出してくる絵本にみんなが釘付け。泣いていたお子さんもいつの間にかご機嫌になってしまいました。
「絵本のお家だと、その場の様子や雰囲気で予定していた絵本とは別の絵本に差し替えたり追加できるのがいいのよね♪」と満面の笑顔で話してくださった森川さん。
音楽が流れ、森川さんの読む絵本の世界に子供たちだけでなく、お母さんたちもそして私たちも引き込まれていきました。読みながら、お子さんの質問に答えたり、絵本について話しかけたり、絵本の一部を触らせたりしてくださいます。
参加された方のお一人は「絵本の読み聞かせは静かに聞くものだというイメージがいい意味で壊され、絵本の楽しみ方を再発見するきっかけになった」とおっしゃっていました。
ママたちにも絵本の時間が楽しめる秘密
1冊読み終わると、ママたちに「クリスマスプレゼントは何がほしい?」と質問してくださいました。子ども中心の生活に慣れきったママ、とっさにプレゼントが思いつかないけれど、口を開くと楽しそうに話し始める様子がうかがえました。それにうなずく他のママたち。ママたちが話せる場を大切にしたいという森川さんの想いが伝わってきます。
絵本ごとに音楽も変わり、何冊か読んでいただくうちにママも子どもも和んだ顔になっていく不思議な空間。
「絵本」と聞くと、子ども向けと思いがちな方が多いのではないでしょうか。
コンサートリーディングも、最初の参加のきっかけは「子どものため」だったという親子はたくさんいたそうです。でも、子どもはもちろん、親である大人も引き込まれていく絵本の世界の魅力。絵本は子どもだけでなく、大人のためにもなるんだ!!という気付きを得る瞬間なのです。
確かに大人になってから絵本をよんでもらうという経験は、なかなか得られるものではないですよね。
最後に読んでいただいた本は「Today」。この本は、ニュージーランドの子育て支援センターの壁に貼ってあった詩を日本で絵本として出版されたものです。コンサートリーディングのメンバーの1人、ようちゃんこと岩崎陽子さんによる手話とのコラボでした。森ちゃんの読む声と手話による描写で、ママたちの日常が脳裏にくっきり浮かんできて涙がこぼれそうになりました。他のママさんも涙していて、さっきまでの和やかな雰囲気が若干しんみりとした雰囲気になりそうな一コマなのですが、この涙こそ「私だけではない、今日からまた頑張ろう」と思えるエネルギーの素になるのでしょう。
お気に入りが見つかりそう!季節ごとに入れ替わる絵本
子どもも大人も楽しめるコンサートリーディング。「音楽と共に絵本を読み伝えることで、子育て中のママを応援したい。癒したい。」と始めた森川さん。活動は10年目になり、2017年に念願の「森ちゃんの絵本のおうち」を開かれました。
驚いたことに、この絵本のお家には絵本が500冊あるそうです。その絵本が壁や棚にきれいに並べられていました。そして、ご自宅にまだまだ2500冊の絵本があるそうです。
「シーズン毎に自宅にある絵本と入れ替えているのよ!」と笑顔で話す森川さんは楽しそうでした。絵本1冊1冊に森川さんが選んだストーリーや想いが詰まっていることが伝わってきました。
部屋の一角にママやパパへ向けた絵本も数冊飾られていました。気になった絵本、子どもと一緒に読みたい絵本、自分が読みたい絵本が自由に手にとれることも醍醐味です。
ここ「森ちゃんの絵本のお家」は「まちライブラリー(※「本」を通して「人」と出会うまちの図書館)」にも登録されており、気になった本、家でゆっくり読みたい本などがあれば、借りることも可能です。返却期限も1ヶ月程度と緩やかなので、自分のペースでまた来てもいいんだなぁという気持ちになります。
持ち込みランチ、お茶とおしゃべりでくつろぎタイム
コンサートリーディングは、戸塚区民センターや東戸塚のイオンスタイルなどでも開催されていますが、「森ちゃんの絵本のお家」には、ここにしかない魅力があります。
たくさんの絵本に囲まれた小さなお部屋で、子どもたちが絵本に夢中になっている間、ママたちは森川さんに淹れていただいたおいしいお茶でほっと一息。
その場の雰囲気で絵本を選んでもらえることはもちろん、コンサートリーディングが終わったあとも持参したランチを囲んで参加者の皆さんと共に余韻にひたることができます。少人数ならではの本音もぽろっとこぼせるオアシスとなっています。
「子どもが泣いても、ここなら周りに気兼ねすることなく全部受け止めてもらえるんです」と話してくださった方の一言に、周りにいたママたちが温かいまなざしで見守っていた様子が印象的でした。
ちょっぴり立ち止まって充電できる居場所
ところで、取材をした松本は生まれつき耳がきこえません。森川さんのコンサートリーディングは今までに何度か別の場所で体験をしたことがあります。しかし、「森ちゃんの絵本のお家」で1つ発見がありました。それは、小さなおうちのおかげだからでしょうか、音楽がわずかに聞き取れ、さらに、その音楽の中で響き渡る森川さんの優しい声まで聞こえてきました。他のお母さんたちがコンサートリーディングに魅了される訳がわかった気がしました。
終わり際に、お子さんが2人、お孫さんもいらっしゃるという森川さんがそっと話してくださいました。「実は、子育てがあまり得意ではなかったんです。」と。そんな森川さんだからこそ、絵本を読み伝えながら、あちこちにさりげないメッセージを残しつつ、子育て中のお母さんたちに寄り添えるのですね。
絵本だけでなく、「ちょっと疲れちゃったかも…」「誰かに話を聞いてほしいかも…」と思ったら、森ちゃんの絵本のお家で開催されるコンサートリーディングで充電してみませんか。
文:まつもとまつり
写真:うえおかともこ