Kosha33ライフデザインラボ・船本由佳さん:「母」ではなく「自分」として過ごせる、大人としての自分を取り戻せる場所

子どもが生まれてから、何もかもが自分のペースでできない。
家事はもちろん、食事、睡眠、トイレ…少しでいいから「自分の時間」がほしい!
ママ友と話すのは子どものことばかり。「私」はどこへ行ってしまったんだろう?

そんな時に行ってみてほしい場所がこの春、関内エリアにできました。

Kosha33 ライフデザインラボ、横浜スタジアムからすぐ!

関内駅から横浜スタジアムの横を通り抜け、真っ直ぐに海の方に向かう日本大通り。Kosha33は横浜の中の横浜とも言うべきこの日本大通33番地にできました。
神奈川県住宅供給公社が運営するこの施設には、カフェ、ホール、スタジオ、そしてライフデザインラボがあります。

温かな木材の質感と明るい白壁、全面ガラス張りのラボは建物の外観から想像できないほど開放感があります。

それからこの大きなテント!この中にはおもちゃがたくさんあり、子どもたちも楽しく遊ぶことができます。

こちらのライフデザインラボの所長 船本由佳さんは、6歳と4歳のお子さんのママ。
中区で活動するママグループ「まま力の会」代表として、これまでさまざまなイベントを実施したり、横浜の子育て情報のフリーペーパー「ベイキッズ」の編集にも携わってきました。

「まま力の会」から「ライフデザインラボ」へ

「まま力の会」は2013年2月、「子育てしてても諦めない、何かやってみたいママ募集!」という本牧地区センターでの募集に応じて参加した14人のメンバーでスタートしました。

そこから、「手作り味噌の会」や「おせちシェアの会」、地域の方から不要となったミシンを募って地域で共有する「まちのミシンを持つ」プロジェクト、象の鼻テラスで「ゾウノマママルシェ」など、ママたちがあったらいいなと思うイベントを開催してきました。

サークルとしてメンバー間だけで楽しむのではなく、参加したいと思う人がいつでも参加できるよう外に開いた形でイベントを行っていたのが、「まま力の会」の他の子育てサークルとは違ったところでした。

一転、新しくオープンしたライフデザインラボは「ママ向け感」はかなり薄いようでした。
どのような形でこのラボは始められたのでしょうか。

「元々、まちのミシンプロジェクトで集めたミシンを置いていた場所が、スペースを借りられなくなってしまい、置く場所を探していたところ、この場所に新しい地域のコミュニティスペースを計画されていた神奈川県住宅供給公社さんからお話をいただきました。」

今現在、ライフデザインラボには9台のミシンが置かれています。確かにこれだけの数のミシンは一般家庭に置いておけないですものね。

「場所を貸していただけるのはとてもありがたいお話だったのですが、現実的な話、この場所をママたちだけで運営していくというのは厳しいと思ったんです。毎日朝早く来たりするのもそうですし、子どもが体調を崩したりすることもあるし…これは誰かに助けてもらわないと難しいぞと。それで、この場所を使うのに関心がありそうな人たちに声をかけて、やってみたいという人たちに来てもらうことにしました」

ライフデザインラボには「研究員」として40名ほどが在籍しており、そのうちの半分は子育て世代、その他はクリエイターや個人事業主の方たちが関わっているそうです。

「研究員の方たちはみんなおもしろいですよ〜。”こんなふうに生きていいのか!見本市”みたいな。ヘンテコリンな大人たちばかりです(笑)」


こちらがヘンテコリンな大人たちの一部

ママたちだけでやらない、あえて「ママラボ」にはしない

「まま力の会の時には、自分たちの力だけでやろうとしていました。甘えてるって思われたくない、助けてって言いたくない。ママたちだけでもこんなことができるぞって」

その気持ちはよくわかります(苦笑)子育てを誰も助けてくれない。誰も助けてくれないなら自分たちだけで何とかしてやるというような気持ちが私にもありました。

「そうなんですよね。でも、助けは求めた方がいいと今は思っています」

「自分が子育てをするまでは、子育てがこんなに大変なものだって知らなかったんですよね。なぜ誰も教えてくれなかったんだって思いましたよ。それって、子育てをしている人が身近にいなかったからというのもありますよね」

確かに、子ども、母親、会社で働く人達、おじいちゃんおばあちゃんたちなど、社会にいる様々な人達が交わる機会が少ないのは現代の特徴とも言えます。子育てについて、子育て当事者の母親以外の人たちが知る機会がなくなったのは、”孤育て”の原因の一つかもしれません。

「まま力の会で自分たちの活動をしていく中で、この活動は子育て世代に限定しなくてもいいんじゃないかなというものがあることに気づきました。例えばおせちシェアなら年配の方が少しだけほしいから参加したいとか、ミシンならものづくりがしたい人なら広くやれますし」

「”子育ての場所”と言ってしまうと、それ以外の人が参加しづらくなってしまう。子育て中の人も、もっと積極的に他の世代や子育て中の人以外の人と関わることで視野が広がることもあると思ったんです。だからライフデザインラボはあえて”親子の”とか”ママラボ”とかにはしませんでした」

ライフデザインラボのイベントは、子連れ参加OKですが、子連れに限定しているわけではないので様々な人が集まります。普段の日常では会うことができないような人に会えることもライフデザインラボの魅力ですね。

ミシン、アロマ、整理収納にお金や生き方の話まで

ライフデザインラボでは、概ね毎週木曜にミシンのワークショップ、その他にもアロマでおしゃべり、ヨガや整理収納術、金融など毎月様々なイベントが開催されています。

「ここのイベントは、いわゆる習い事とかお教室みたいに先生から生徒に教えることでそのテーマについて習熟することを目的としていなくて、同じ経験をした人がそれについて話す、お互いに学び合う場なんです」

イベントは様々なテーマで行われているけれど、それぞれの人たちが興味のあるテーマを切り口に、参加した人たちがお互いに話すんですね。

「たとえば”アロマでおしゃべりの会”とか、幼稚園のママ友同士で来た人たちが、子どもが生まれる前にはこんなことやっていてとか、それまで友達同士でも知らなかったことを話して、あなたってそんな人だったんだ!みたいなこともありました」

自然と自分の話ができる場が作られているからこそのエピソードですね。
ママ友とは子どもの話しかしないということも多いですが、そうやってお互いの知らなかった一面を知って、子ども抜きでも友達でいられるような関係を作れたらいいですよね。


ライフデザインラボでこんなことやりたい!をみんなで書いたもの。

「子育てしてると、会議とか知的な話をしたいと思ってもなかなか難しい。でもここは子どもを連れてきてもいいし、そういうことを諦めてほしくないんです」

家で赤ちゃんと二人きりだったりすると特に、誰か大人と話したいと思いますよね。
一日のうちに話をするのは下手すると夫だけ、良くてもママ友や子育て支援のスタッフさんなど、いつもどこにいても子どもの話しかしなかったりします。

「そういういつも顔を合わせるのとは全然違う人と接し、話をする。色々な人がいて、それぞれの選択があると知る。そうしたら、どんなことも選択するのは自分だとやがて気づく。他の大人と話すことで、大人としての自分を取り戻してほしいんです」

子どもや夫…いつも誰かの都合に合わせて生活していませんか?

「子育てしてると、視野がすごく狭くなってしまいがちです。子どものリズムに合わせて生活して、送り迎えや病気をすれば看病とか…。子育てのことだけでなく、夫の仕事の都合や親の看護など、女性は何かと自分以外の誰かのために自分自身の生活を大きく変えることを迫られることが少なくありません。そうしているうちに、自分で選択できることがなくなってしまう」

保育園に入れるには0歳からじゃないととか、夫の転勤があるから働くのは無理とか、その時その時の家族の状況で、いつの間にか自分の人生の選択肢を狭めてる人も少なくなさそうです。

「子どもの都合とか、夫の都合とか、誰かの都合でばかり動いていると自己肯定感が低くなるんです。でも、自分の意見を言ってもいい。自分で自分のことを選択するということを思い出してほしいんです」

ここに来たら、子どもが中心でなくていい。色々な人がいて、大人としての自分で話をすることができる。子どもがいつも中心という生活をしていると”自分自身”のことを忘れてしまいがちになりますが、ここでは”自分”に戻って話すことができるんですね。

「ラボの研究員たちもそうですけど、ここでおもしろい人に出会って、色々な生き方に触れて、変わり者に普通の人が感化されたらいいなと思ってます(笑)」

「おもしろい大人がたくさんいたら、その街はおもしろくなると思っていて。ここはそういうおもしろい、変な大人たちが中心になって、まちづくりの実験を繰り返す場所なんです」

人生は楽しいと伝えたい!

「女性だけじゃなく男性もですが、これからの時代は、今後自分がどうやって生きていくかを選択する場面が何度も訪れると思います。その時に何を選択したとしても、この道は自分で選択したと思える自分でいられるための場所を作りたい。

 ライフステージが変わった時に、次のステージに変わる自分を肯定できる。
 人生は楽しい!というのを伝えたいですね」

ライフ=くらし・人生、
それをデザインするための、
ラボ=研究所。
それでライフデザインラボなのですね。

「そう、人生に惑うことを感じた人はみんなここの関係者です(笑)」

船本さん、ありがとうございました!

文: うえおかともこ
写真: 陰元真美子(foto ingen)