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みんなの食場・大滝徳子さん:「食」から変える社会と未来ーあるこども食堂の挑戦ー

「子ども食堂、毎日やっています」

イベントで偶然行くことになったお店のFacebookで見つけたこのメッセージに私はふと目を留めました。

子ども食堂は月に一、二度程度やっているところが多く、そもそも常設の店舗を持っていることが珍しいのですが、調べてみると子ども食堂の他にも子育てひろばや様々なイベントが開かれていたりと、どうもただの子ども食堂ではない様子。

この何やら一風変わったお店「みんなの食場」の店主、大滝徳子さんにお話を伺いました。

横浜駅から市営地下鉄ブルーラインで一つ先の三ツ沢下町駅から徒歩5分。ぽつぽつと商店が並ぶ通りの一角に「みんなの食場」はありました。

かわいい雑貨とおしゃれな瓶詰め。よく見てみると、無農薬の豆や天然出汁のミックスが売られているようです。その他にも情報コーナーや、リサイクル品のコーナー、片隅にはマットが敷かれ、子どもの本棚とおもちゃがあったりと、おしゃれなカフェの雰囲気と友達の家のような雑多感がいい意味で混在して、親しい友達の家に来たようです。

料理は嫌い!?働きながらも健康に良い食事を作り続けた母の手腕

さて、まずはイベント目的で訪れたこちらのお店、他の参加者の方々とみんなでお食事をいただきました。

津久井の契約農家さんから仕入れたというたくさんの種類のお野菜を使った何品ものお惣菜に、玄米と五分づき米のごはん。天然出汁のみ使用して味付けされたお料理はとてもおいしくて、子ども食堂ではありますが、大人だけのお客さんもよく利用されるというのも頷けます。

ところがイベント参加者が大滝さんも交えて談話する中、大滝さんがこんな一言を漏らしました。

「私は料理は嫌いだから。」

この栄養バランスの取れた素晴らしいお料理を作られたがなぜ!?
私を含め一同は大仰天!

「料理には1日15分しかかけないって決めてた。あとは1週間に1回だけストックを作っておく。それも1時間で作れるものを。」

働きながら3人の息子さんを育てた大滝さん。忙しい帰宅後の時間、手早く夕食の準備をしたいと思うのはすべての働く母の願いだと思います。でもどんなに簡単なものでも15分でというのはなかなか難しいもの。「教えて欲しい!」と続々と母たちの声が上がります。

「以前は毎朝ごはんを6合炊いてた。長男がサッカー部だったんだけど、厄介なことに強豪校で、お弁当の内容が採点されるのよ。」

ただ普通に毎日作るだけだって大変なのに、お弁当が採点されるなんて、考えただけでもぞっとします!

「ジョコビッチとかクリスチアーノ・ロナウドの食事の本を読んで参考にした。息子はグルテンアレルギーではなかったからグルテンフリーはやらなかったけど、それ以外の部分は取り入れた。それはこのお店の料理でも同じ。

結局、身体さえ丈夫なら生きていけると思うのよね。働くお母さんにとって、子どもが体調を崩すっていうのは大変なこと。子どもが健康なのが一番。”みんなの食場” は自分がこういう店がほしいって思ったのをやっている。」

仕事をして家に帰って、それから食事の支度をするのはとても大変です。でも、できあいのお惣菜に頼ってばかりだと、添加物が多かったり野菜があまり取れなかったりといったジレンマがあります。「楽して健康にいいものが食べたい」というのは、忙しい親なら誰でも願うところでしょう。

発達障害の人を雇う、想像を越えたその理由

「うちは発達障害の子たちを雇っているから」
会話の中でふとこんなことを言った大滝さん。

「発達障害の人たちを雇用するのには何か理由があるのですか?」と私は尋ねました。

「発達障害があっても年収一千万円稼げる人を50人出すつもりだから。」

いきなり出てきた物凄い目標に私が驚いたことは言うまでもありません。発達障害でなくとも、年収一千万円稼げる人というのはそうそういるものではありません。

「うちの次男が発達障害があって、そこで働いてるんだけど。
 今、学校では発達障害の子たちが増えていて、グレーゾーンと言われる軽度の子も含めると全体の2割いると言われている。知的障害がないと支援級には入れてもらえない。でも、落ち着いて授業を聞いていられないとか、発達障害による行動特性のために授業についていけないとか、クラスで浮いてしまうとかで、結果的に引きこもりになる子が大勢いる。」

労働人口が激減する2025年、誰が働くの!?

「現在、20代以上の引きこもりの約半数に発達障害があると言われている。彼らは働くことができず、親の庇護がなければ生活保護を受けることになる。2025年には労働人口が全人口の半分になると言われているけれど、その中には発達障害がある人や子どものいる女性など、今だと働くことが難しい人たちも含まれてる。この状態で誰が働くの?

ご自身の息子さんのことだけでなく、この社会の未来の状態まで想像し、具体的な数字も出して危惧を露わにする大滝さん。

「学生の間までの支援なら1人につき2万。でも生活保護になったら毎月8万9万がその人にかかる。 生活保護になったら、学生の間に支援するのの3倍以上かかってしまう。それなら、なるべく若いうちに出来る限り支援をして、その人を働ける人にした方がいい。発達障害があっても、働いてしっかり稼ぐことができる。」

「発達障害の人が年収一千万円取れることを目指すのは、ソーシャルビジネスを将来仕事にしてくれる若者が出てきてくれるように。 いいことをやっていたって、それで食べていくことができないんじゃ、誰も継続できない。 継続するためには稼いでいく仕組みが必要なのよ。」

世の中には、行政の手が届かない、身近にある「小さな困った」を解決しようとしている人たちがたくさんいます。でも、善意だけではそれは続かない。活動しようとすれば必ず資金は必要になります。無料のボランティア活動だけでは、その活動をしている人たち自身が食べていくことができません。多くの子ども食堂が月に一度程度しか行われないのは、そこにも理由があります。

「食べるのに困る子どものための子ども食堂が、月に一度しかやっていなかったら、それ以外の日はその子どもは食べられないでしょ? 毎日やっているからこそ意味があるのよ。

「みんなの食場」は子ども食堂ですが、有償で食事を提供し、株式会社として経営しています。そのことに批判もあったといいますが、事業性を持って継続することに意味があると大滝さんは強調します。

子どもたちが自分で稼ぎ、食べるということを学ぶ

「みんなの食場では、子どもたちが”お当番さん”として配膳をしたりするのだけど。どうしてもごはん代が払えない子は、裏でこっそり言ってくれたら”お当番さん”として働いてもらって、それでごはんを出してあげる。 働くことで自分の食い扶持を得られる。子どもの尊厳を守りながら、子どもたちが食べられるようにしている。

困っている人には無償で何かを与えるということがまず考えられがちですが、施しを受けることで、その人に「施しを受ける人」というアイデンティティを付与することにもなりかねません。
「働く」ことで人は社会における自らの必要性を認識し、自分の力で食べるものを得られるようになるという側面も見逃せません。

「みんなの食場」では、毎週火曜に 「ツナ・カンまなび塾」 という子どものための社会学習の場があり、その一環として三ヶ月に一度スペシャル企画としてバザーが行われています。

そのバザーでは、子どもたちが自分たちで売る商品を集め、バザーの宣伝をし、お客さんを集めてお金を稼ぎます。

「バザーの売上のうち3分の1は場所代としてお店に支払い、3分の1は福祉団体に寄付、残りの3分の1が自分たちの取り分になる。その3分の1の自分たちの取り分をどうやって増やすかをみんな一生懸命考えてるのよ。」

実際に社会で行われている商売でも、売上の100%が収益になるということはまずありえません。売上から場所代を出し、寄付を行うというのは、子どもを「子どもだから」と見るのではなく、ある意味大人と対等の目線で、彼らの力でできる社会参加と社会貢献を促す良い場になっていると思いました。

食べるものにより、身体と心は作られる

「今、これだけ飽食の時代に 新型栄養失調と言われる栄養不足になっている人がたくさんいる。」

偏食やダイエットが原因で起こると言われていますね。お年寄りに多いそうですが、若い女性や子どもにも見受けられるそうです。

「私たちは食べ物から栄養だけじゃなく情報も食べているの。

食べ物から摂取した栄養を元に身体は作られる。それぞれの人種がその土地その土地のものを食べてきた。先祖代々何を食べてきたかというのは、DNAを見れば分かる。
現代は、遺伝子組み換え食品など種無しの作物ばかり。だからそれを食べた人間も、種を作れなくなる。」

現在一般的に売られている野菜は、F1種という人為的に作られた一代限りの雑種。遺伝子組換えではありませんが、世代交代を繰り返さない、つまり種子を残さない作物なのです。現代の野菜の栄養価は昔と比べると大幅に減ってしまっていますが、これは化学肥料の多用による土壌の痩せや、このような不自然な交配を繰り返した結果と言われています。

「息子の発達障害に向き合う中で、食べるものがそういう障害にも影響するということを知った。 添加物や栄養に欠けたものばかりを食べると、 思考もできなくなるし、メンタルも弱くなる。小さい頃からちゃんとしたものを食べることで、発達障害にもなりにくくなる。

そして研究された食事が「みんなの食場」のお料理になっているのですね。

個人的な話ですが、私も母が癌になって食事療法について調べていた時に、癌患者のための食事の内容が、アトピーやアレルギー、その他の慢性疾患、鬱などの精神疾患を治そうとしている人の食事療法の内容とほとんど共通であることに気づきました。

「みんなの食場」のプレートメニューを最初に見た時に、癌予防の日常食として理想的だと思ったのですが、発達障害でも同じだったのですね。

私自身も家の食事を変えるようになってから、娘のアトピーが大幅に改善したので、食べ物の力はあなどれないということを強く実感してます。

「でも、毎日ちゃんとしたものを作って食べさせるっていうのは大変でしょ。特に働く親にとっては。ここに来てれば勝手にいいもの食べさせてあげるから(笑)

毎日ここのごはんを食べていたら、親子ともども健康にいい食生活が送れてありがたいですね!

子どもの心身の発達、教育、社会を変えるための仕組みづくり、「子ども食堂」という一つの枠組みの中で、多くのことが考えられ取り組まれていました。
「みんなの食場」がここだけでなく各地に広がれば、社会が変わる、そんな気がしました。

大滝さん、お話どうもありがとうございました!

文:うえおかともこ

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